進学の時に研究室を変えたいなら変えるべき3つの理由を解説【経験者アドバイス】

 大学生や大学院生の方々が所属することになる研究室は、今後のキャリアを大きく左右する重要な環境です。その中で、現在所属している研究室とは別の研究室に進学したいと考える人も多いと思います。実際、筆者も博士課程に進学するときに研究室を変えて、博士課程を修了することができました。

 この記事ではまず、研究室を変えるタイミングを3つのタイプに分け、それぞれについてメリットとデメリットを挙げていきます。次に、進学の時に研究室を変えたいと思ったら変えるべきである理由を3つ説明し、筆者の経験も紹介したいと思います。

研究室変更の3タイプ

 研究室変更は大きく3つのタイプに分けられます。ここでは、進学のタイミングだけを考えます。

タイプ① : 学部→修士の時だけ変更

  
 学部4回生(B4)で配属される研究室に1年在籍し、修士に進学するときに研究室を変えるタイプです。以下のメリット、デメリットがあります。

メリット : 身軽に環境を変えることができる

  
 3つのタイプの中では最も身軽に環境を変えることができます。移転先の研究に興味があるという理由でなくても、大学受験では行けなかった大学に大学院試験でリベンジしたいという理由や、大学は地方だったから大学院は都市圏に行ってみたいなどの理由も合理的です。
他にも以下のメリットがあります。
・移転先で腰を据えて研究に打ち込める
・学部4回生で配属される研究室には1年しか在籍しないため、しがらみも少ない
・移転先の研究室を修士で卒業後、就職or進学の選択肢もとれる

デメリット : 院試のハードルが高い

 研究室を変えるためには、同じ学科の別の研究室に進学するという場合を除いては、他の大学院の試験に合格する必要があります。そのため、その大学院の院試対策が最も大きなハードルになります。大学によって必要とされる試験も異なり、TOEICのスコア提出が求められる場合もあります。TOEICは受験申し込みからスコア入手まで2ヶ月くらいかかると思うので、事前の情報収集と早めの行動が必須です。
 別の研究室に進学したいのであればその研究室の見学をすると思うので、見学の際に研究室の在籍生に大学院試験の問題をシェアしてもらうように働きかけるのが最も有効であると思います。私はこれまで2つの研究室に在籍していましたが、どちらの研究室にも院試の過去問がストックされていたので、研究室の在籍生にお願いすればシェアしてもらえる可能性は高いと思います。

タイプ② : 修士→博士の時だけ変更

 
 B4、M1、M2と3年間在籍した研究室から、博士に進学するときに研究室を変えるタイプです。以下のメリット、デメリットがあります。

メリット : 新鮮な気持ちで博士課程に臨める

 修士課程まで3年間在籍した研究から、博士課程では別の研究に取り組むことになるため、新鮮な気持ちで博士課程を過ごすことが出来ます。修士課程まで通算3年間在籍していた研究室を変更し、博士課程から新しい環境にチャレンジできることでマンネリ感をなくすことができます。また、修士課程までの研究が自分にとって納得のいくものでなかった場合、研究内容をリセットできる機会でもあります。

デメリット : 修士課程までの業績がリセットされるので修了が慌ただしい

 修士課程まで3年間取り組んできた研究内容をいったんリセットして、博士課程に臨む必要があります。通常、博士課程の卒業要件に修士課程までの業績は認められていないため、博士課程からの業績のみで博士号取得をめざすことになります。そのため、3年間で博士号を取得するためには駆け足での研究を行うことになります。3年での学位取得が不安になる点が修士→博士に変えるときの最大のネックとなります。

タイプ③ : 学部→修士→博士で毎回変更

  
 B4→M1で1回目の、M2→D1で2回目の研究室変更をするタイプです。以下のメリット、デメリットがあります。

メリット : 最も多様な経験ができる

 
 3カ所の研究室で学ぶことが出来るため、3つのタイプの中では最も多様な経験が出来ます。研究室が異なると、スタッフや学生のカラー、測定装置や保有技術などが大きく異なるため、幅広い人間関係の構築や技術の習得を行うことが出来ます。また、タイプ②と同じように、新鮮な気持ちで研究に取り組めるのもメリットです。

デメリット : 応用的な問題に取り組む期間が短くなりがち

 進学の度に環境を変えることになるため、そこで新しい技術を学ぶ期間が長くなります。研究室の最初の半年から1年は基本的な研究方法について学ぶことになり、最後の3ヶ月は修了に向けた取り組みになるため、応用的な問題に取り組める期間は、修士なら1年、博士なら2年になります。よって、身につけたスキルを活かして深いものにしていく期間が、3つのタイプの中では最も短くなりがちです。また、タイプ②と同様、3年間で博士号を取得するためには駆け足のスケジュールとなることもネックです。

研究室を変えたいなら変えるべき3つの理由

 ここからは、研究室を変えたいと思ったら積極的に変えるべき理由を3つ説明していきます!筆者自身の体験も紹介します!

自分の興味関心に向かって突き進める

  
 今の研究に興味が持てず、他の研究に興味があるという人は多いと思います。研究室で与えられたテーマが自分で思っていたものと違ったりすると、他の可能性を考えるようになるのは自然なことです。その様な状況だと、自分にとってわくわくするような研究をしている研究室の存在を知ったら、そこにいきたいと強く思う様になります。このような流れで新しい環境にチャレンジしたいと決断するのはポジティブなことであり、進学に当たっての不安を打ち消す原動力になります。自分の興味関心は新しい環境にチャレンジし、やり遂げるための強い原動力になるため、自分の心の声に耳を傾け興味関心の力を最大限に活用できる場所を見つけましょう!

環境の変化に対する適応力を高めて社会に出られる

 
 研究室を変えるというのは大きな環境の変化であり、多大なストレスがかかります。慣れない新天地、新しい人間関係、ガラッと変わる作業内容等、20代前半では慣れていない多くの変化を体験することになります。一方、これらの変化に対応することにより、環境の変化に対する適応力を強化することが出来ます。
 このような適応力は、今後社会で活躍していく上で活かされます。新卒で採用された会社で業務をする上ではもちろん、これからの時代は転職が珍しくなくなる時代であると言われています。自分自身が臨む臨まないに限らず、転職をする可能性は大いに考えられるため、環境の変化に対応する力を磨く機会として、研究室変更にチャレンジするのはとても良い選択だと思います。

今いる研究室を自分の中の基準にして選択することが出来る

 
 最後はマッチング理論的な観点から、研究室を変えた方が良い理由について解説します(最適停止問題お見合い問題)。要点は、今いる研究室を自分の中での基準と考えることで、別の研究室に移った際により満足度を高めることが出来るということです。
 お見合い問題では、「仮に100人の異性と交際できるなら、37人目までと別れて38人以降の人で最初の37人よりも良かった人を選ぶのが、100人の中で最適な人と付き合える確率が最も高い」といわれています。最適停止問題における「37%ルール」という法則に一般化され、選択肢の中から37%までは見送ることで最適な選択肢を選べる確率が一番高くなるというものです。
 37%ルールを直感的に理解するなら、「自分の中で基準を持たない場合は最適な選択肢を選ぶことが難しい」ということです。最初の37%を見送るという行為が自分の中で基準を作ることにつながるといえます。37%ルールは数学的な証明に基づいているだけで、実際の問題へ当てはめるのが難しい場合もあります。37%という数字にとらわれるのではなく、自分の中で基準を作っていくということがポイントです。
 このように考えると、研究室選びについても、最初の研究室を基準と考えて2番目の研究室に移るというのは、自分にとって最適な環境を探すために有効な選択であると考えられます。通常、研究室選びは100回も繰り返せるようなものではなく、選び直せるのは多くても2回までですが、学生のうちから自分の中で環境の基準を増やしておくことで、卒業後に社会に出てからの働き方に活かすことが可能です。

筆者の体験について【タイプ②:修士→博士で1回だけ変更】

 
 筆者自身は、修士課程から博士課程に進学するタイミングで研究室を変更したタイプ②でした。修士課程までは、レーザーを使った物理化学の基礎研究に取り組んでおり、教授に博士課程への進学を勧められていましたが、当時の研究に興味が持てず、この道に進んでしまうと後で後悔してしまうのではないかと強く不安に思っていました。
 また、私は応用研究に興味があり、エネルギーの研究を行う科学者になりたいという夢がありました。そこで、当時の環境に対する不安を感じていたことに加えて、自分自身の興味関心に従って進路を決めたいという思いから、太陽電池の研究を行っている研究室へと進学しました。
 修士課程までの3年間の積み重ねをリセットして博士課程に臨むのは不安もありましたが、自分の興味関心に従って楽しく3年間研究に励んだことで、無事3年間で博士号を取得することが出来ました。

新しい環境にチャレンジするのを応援しています!

 この記事では、研究室変更タイプを3つ紹介した上で、迷ったら研究室を変えるべき理由を3つ説明致しました。

・自分の興味関心を原動力としてチャレンジすること
・新しい環境への適応力を磨いておきこれからの社会に備えること
・マッチング理論(最適停止問題)に基づき、自分の中で基準を作っていき、選択を恐れないこと


これら3つの理由を基に、新しい環境にチャレンジしたいと考えている人の後押しを出来れば幸いです。

 ここまでこの記事を読んで頂き、ありがとうございました!自分はこういう体験をした、などコメントをくださると嬉しいです。また質問なども気軽にしてくださると喜んでお答え致します。
 今後も、勉強や研究に関する記事を書いていこうと思うので、宜しくお願い致します。

1 COMMENT

さんちゃん

実際に経験されている方のお話は進路変更を考える後押しになりそうですね^ ^

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