スキル不要!英語論文を書く3つの心構えやコツ!【英検1級&博士号取得者】

 大学院生の方には研究論文を自分の手で執筆する機会があります。特に博士課程の場合、修了要件に投稿論文が挙げられることがほとんどであるため、避けて通ることが出来ません。また、修士課程の方でも研究が順調であったり指導教授から勧められたりで書く機会があるかと思います。
 「英語力なんて自信がないけど英語論文なんてかけるかな?」、「TOEIC400点とかで英語で論文を書くなんてムリ…」など、英語論文を書くことに対して大きな不安を示す人もいらっしゃると思います。しかし、安心してください!英語力に自信のない方やTOEICで点がとれない人でも、英語論文を書きたいという意思さえあれば問題なく英語論文を書けることを、英検1級&博士号取得者が解説していきたいと思います。
 本記事では、スキル不要で英語論文を書く心構えやコツを3つに絞って説明していきます!まずはこの参考書を読んで(ドサッ…)などと言うことはないので安心してください!本当に心構えやコツだけでスキル関係なく書けるようになるので、これから英語で論文を書こうと思っている人の参考になること間違いない内容です!

心構え①: 英語論文は時間無制限、何でもありの書き英語

 まず多くの人、特に英語が苦手だと感じている人が認識していないことは、英語論文はほぼ時間無制限の書き英語であり、これまで体験してきた大学受験、TOEIC、英検などの受験英語や、とっさの判断が必要になる英会話とは根本的に異なることです。それぞれの特徴について見ていきましょう。

受験英語の特徴(大学受験、TOEIC、英検など)

・60分、120分など時間制限がある
・辞書使用禁止のため単語や構文の丸暗記が必須
・マルバツで採点された結果を自分が受け止めて終了

英会話の特徴

・相手の内容が聞き取れないと聞き返して気まずい空気になる
・とっさに単語が思いつかず会話が10秒も止まると、もうダメという気持ちになる
・自分の表現が正しいかどうかすぐには確認できない

英語論文の特徴

・執筆時間はほぼ無制限(1ヶ月以内など目標はある)
・辞書使用可能のため単語や構文暗記は不要
・とっさに単語が思いつかなくても検索すれば良い
・指導教授に添削してもらえ、投稿するときに査読も受ける

英語論文は時間無制限のなんでもありルール

 受験英語のレギュレーションでは単語や構文の暗記量、英会話ではいかに多くの経験をしてきたか。受験英語も英会話も、蓄積の違いが大きな差となって現れるため、多くの人が英語が苦手という意識を植え付けられます。しかし、英語論文の執筆は時間無制限の書き英語であるため、辞書や翻訳ツールの使用、果ては留学生による手助けなど、「なんでもあり」の世界です。まず、英語論文の執筆はこの「なんでもあり」ルールの中で行われるものであるという事を認識しましょう。
 このように考えると、英語論文を書くためには文法帳や表現集を読み込んで…という風にはなりませんよね。なぜなら皆さんは実験や計算、セミナー資料作成など研究活動で忙しいのですから、英語の勉強だけをしていれば良いというわけではないからです。英語の経験は英語論文を書いていく中で身につければ良いので、まずは受験英語の苦手意識を捨てて、時間無制限のなんでもありルールのもとで英語論文を書くという認識をもつことが大事です!

それでも英語論文を書くことの不安が残る人への参考書

 そうはいってもやっぱり不安…という方に、私が使っていた参考書を紹介します。とても薄いので携帯性も良好です。私は通学中の電車でこの参考書の例文を暗記していました。こういった軽めの参考書は、単に構文の暗記だけでなく、「自分は参考書1冊覚えた」といった自信につながるためオススメです!

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心構え②: 必ず日本語で下書き!日本人だから日本語で思考する

 英語に苦手意識のある人が気がつかない2点目は、まず日本語で下書きをするべきだという点です。よく英語を英語のまま理解する、みたいなことを言われるので、英語を書くときも日本語で下書きなんてダメなのでは、と思う人もいると思いますがそれは大きな間違いです。英語でものごとを考えて書けるのは、英語圏で生まれ育った人か、限りなくネイティブレベルに近い日本人だけです。私たち通常の日本人は日本語でしかものごとを考えません。英語で思考できるレベルというのは、本当に日常生活を全て英語で思考して障害のないレベルです。私たち日本人は、「このスーパーでサラダを買った方があのスーパーで買うよりも100円安いな!」などということを「This salad in this supermarket is 100 yen cheaper than that in that supermarket !」などと英語で考える様な習慣はまずありません。要するに、ほとんどの日本人は英語で思考するのに大きな障害があるため英語から書き始めてはいけないということです。
 また、ほとんどの人には投稿論文を日本語ですら書いた経験がないはずです。その中で、「投稿論文のテクニカルライティングを意識した書き方」を「英語経験の乏しい日本人が英語で書いていく」という2つの慣れないことを同時にやっていくのは至難の業です。まずは日本語で、「投稿論文のテクニカルライティングを意識した書き方」をしていくこと。次に英語に置き換えること。タスクを分割して各個撃破していくことを徹底しましょう。

日本語で下書きをすることで論理的な文章が書ける

 私たち日本人は日本語でものごとを思考するので、当然日本語で下書きした方が論理的な文章を書くことが出来ます。いきなり英語で書き始めてしまうと、伝えたい内容を考えているのか、英語表現を考えているのか、頭が混乱してしまいます。結果として、論理構造もめちゃくちゃで英語の構文もイマイチな論文ができあがり、教授にみせに行ってため息をつかれ、混乱状態の中で頑張って書き上げた論文を否定されるという憂き目にあいます。
 人間は1度に2つ以上のことを並列にこなすと大幅に処理能力が低下してしまうと言われています。まずは日本語で考えることで私たちの思考力を最大限に引き出し、論理的な文章を書くことに集中できるようにしましょう!

日本語を英語に置き換えるのは作業レベルなので習慣化しやすい

 日本語で下書きが完成したら、後は英語に置き換えていくだけです。自分のもつ英語力を当てはめて行くもよし、Google検索をつかって表現を確認するもよし、翻訳ツールにぶち投げてしまうのもよし、まさに何でもありです。この段階は、考えるよりもむしろ作業です。作業化できるということは習慣化しやすいと言うことです。習慣化に大切なことは、その習慣のハードルを下げることです。たとえば、「今日も英語で考えて文章を書き進めていくのか…大変だけどがんばろう…」というのと、「今日も日本語を英語で置き換える作業を進めよう!」というのでは、後者の方がハードルが低いのは明確ですよね!
 具体的な習慣化の例は、毎朝1時間、300words書き進めるといった感じです。普通の投稿論文は、referencesやタイトルなど、全文含めて3000-4000wordsくらいの分量になるため、単純計算で10日で英語への置き換えを行うことが出来ます。最初の内は1日200 wordsしか書けなくても、慣れてくると1日に400-500words書くことも出来るはずです。このように、作業化、習慣化の力を使うことで、英語論文の完成のハードルを大幅に下げることができるのです!
 

心構え③: 英語ネイティブレベルは求められていない

 私たちが投稿する英語論文には、ネイティブレベルの英語を求められているわけではないことを認識しておきましょう!有名なエピソードとして、「お金を出してネイティブに校正してもらった論文を査読してもらったけど、Englishを見直す様にというレビューを受けた」というものがあります。「こういうデータはないのか」や「この内容は矛盾している」等などの対応のやっかいなレビューに比べると、「Englishを見直す様に」は非常によく見られるレビューであり、対応もほぼ100%楽に済むことが多いので、筆者は余り気にしませんが^^;
 なぜお金を出してネイティブに校正してもらったのにこのようなことになるかを考えると、以下の3つが考えられます。

A. ネイティブの校正も完璧ではない

 英語論文の内容は専門性が高いため、校正担当の方が内容を完全にフォローできないことは大いにあり得ます。このような状況だと校正の方も、こんなものか、みたいな感じで手を抜くというか、諦めの入った処理をすることが考えられます。

B. 国籍がJapanの時点で書いた内容を粗探し的に見られる

 私たち日本人が海外の方が書かれた文章などを読むときに感じることだと思います。例えば以下のような感じです。

日本人の書いた日本語
「私たちの知る限りでは、太陽電池の変換効率が30%を超えた報告はない」

海外の方の書いた日本語
「私たちは知る限りでは、太陽電池が変換効率の30%超えた報告なかった」

上の文と下の文で言っていることは同じです。しかし、海外の人の表現には突っ込みをいれたくなるところが多いと思います。私たちが投稿論文を査読してもらうときと言うのも、このような感じです。ネイティブに校正までしてもらい完璧に近いレベルで書いたとしても、国籍が非英語圏である時点で粗探し的な読まれ方をする可能性があります。

C. ネイティブであっても表現の好みが分かれる

 私たちが日本語で文章を書くときにも10人いれば10通りの書き方がありますよね。査読してくれた人の表現の好みに偶然マッチすることもあれば、合わないこともあります。
 文章には本当に好みが出るので、真に受け過ぎない様にすることが大切です。

英語の表現だけでリジェクトされることはほぼない

 英語の表現への指摘については、努力では解決しきれない問題であり、ある程度は仕方のないことです。ここで大事なことは、英語の指摘をされたからといってそれだけでリジェクトされることはほぼ無いということです。(もちろんジャーナルのレベルと英語の程度にはよりますが)。この国際社会にはいろいろな国籍の人が論文を投稿するので、英語表現も国ごとに非常に多様であり、多少の表現の間違いや未熟さには寛容な面があります。この点を意識して、完璧な英語が求められているわけではないと言うことを意識しておきましょう。

英語の指摘をされるのを恐れない

 英語の指摘をされるのを恐れないと言うことも大切です。もちろん英語の表現が未熟であるのを指摘されたら真摯に受け止めることは大切です。しかし、私たち日本人には日本語という素敵な母語があります。私たち日本人は慣れない英語で懸命に文章を表現しようとしているのです。つまり、私たちはハンデを背負って国際社会に情報を発信しているわけです。英語が不慣れで恥ずかしい、と思うのではなく、自分は人類の発展に寄与するために、ハンデを引き受けて英語を書いてやっているんだ、という堂々さを持つことは、英語論文を書くだけでなく、これからのグローバル社会で活躍していく中でも大切な心構えです。

3つの心構えがあれば英語論文が書ける!

 英語論文を書くためにはスキル不要で、次の3つの心構えをしていれば問題ありません!

・英語論文は時間無制限、何でもありルールの書き英語であるという心構え
・日本語で下書き→英語で書き換えの作業&習慣化をする心構え
・英語ネイティブレベルは求められていないという心構え

 この世界に自分の名前で作品を残せるというのはとてもやりがいのある事です!英語が苦手だから…という理由であなたが一生懸命取り組んできた内容が世界に発信されないのはもったいないことです!この記事の内容をもとに、英語論文を書くことを恐れずチャレンジしていってくださると嬉しいです!

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