ごごちと申します。
半導体メーカーで、
材料×データ分析
=マテリアルズインフォマティクス
を活用した研究開発に取り組んでいます。
2023年11月に、
統計検定1級の試験を受験しました。
そして、無事合格することができました。
今回は統計検定1級の勉強方法を紹介します!
他の多くの方も記事を書いているので、
筆者ならではのオリジナリティを
紹介できたらと思います。
教材
基本的に、
(準備→) 統計数理 → 統計応用 → 過去問
の順番で学習していくと良いと思います。
準備 (不安なら)
統計検定1級は、
記述式で数学的な問題が多いため、
数学のバックグラウンドがあるほど
有利なことは否めません。
微分積分を扱う基礎解析や
行列計算を扱う線形代数が
不安な方は、最初に学習しましょう。
基礎解析: 入門微分積分
変数変換や分布関数の計算では
微分積分を扱います。
二変数の積分(重積分)でヤコビアン
というのを学びますが、
2つの確率変数の変換でも登場します。
この書籍は薄いですが、内容は十分です。
ε-δ論法などはスキップして、
二変数の微分、積分を集中的に学びます。
線形代数 : 入門線形代数
回帰分析では行列を扱ったりするので、
線形代数の知識が必要になります。
この書籍は薄く、
1か月あれば演習問題も含めて
1週できると思います。
統計数理
微分積分と線形代数の準備ができたら
統計数理を勉強していきます。
統計数理は統計応用の基礎になるので、
まずは統計数理から勉強します。
初級: 大学1・2年生のためのすぐわかる統計学
統計検定1級は完全記述式なので、
まずはこの書籍を使って、
自分の手で確率・統計の記述問題を
解く感覚を身に着けると良いと思います。
この書籍は基本的な内容ですが、
2変数の確率変数の変換などは
完璧にできるようにしておかないと
合格は厳しいと感じます。
この書籍の発展問題は骨が折れますが
ぜひ1週すると良いと思います。
中級: 現代数理統計学の基礎
こちらは統計検定1級御用達のテキストです。
演習問題は1週目ではどれも難しいですが、
あきらめずに取り組み、
解説の理解に努めましょう。
筆者の体験になりますが、
第6章までの内容で、
統計数理対策には十分でした。
そして、筆者はこの書籍を1週しか
こなすことができませんでしたが、
それでも合格には十分でした。
この書籍を2-3週するよりも、
統計検定全体の合格を目指して
手広く学んでいけばよいと思います。
この本を第6章の演習問題まで1週したら、
実力検証として過去問を1年分解き、
統計数理の学習は仮完了です。
あとは統計検定1級の統計数理の
過去問演習をこなせば完成です。
次は統計応用の勉強のために、
「統計学実践ワークブック」に進みます。
統計応用
統計応用は膨大な範囲に対し、
参考となる演習問題の数が少ないです。
しかし、個別のテーマに対し
専門書を買ってしまうのは効率が悪すぎます。
そこで、
統計検定公式が出版している教材から、
統計検定向けの問題をかき集めて
こなすのが良いアプローチだと思います。
統計学実践ワークブック
統計検定公式が出版しているテキストです。
準1級向け対応のテキストとなっていますが、
統計応用対策に最も有効な参考書です。
この書籍の内容をもとに、
統計応用のどの分野を重点的に学ぶかを
決めると良いと思います。
この本を1周し終わったら、
過去問演習中心で学ぶと良いと思います。
統計検定準1級の過去問
統計応用の問題演習には、
統計検定準1級もおすすめです。
特に、後半の記述問題は、
統計応用対策にもってこいです。
本番で解こうと思う分野については
準1級の過去問で学習しておきたいところです。
過去問
多くの資格試験の例にもれず、
統計検定1級も過去問対策が有効です。
2015年以前の問題は難易度が高いので、
2016年以降の問題を確実に解けるように
力をつけるのが大事です。
全ての年度をやってしまうと、
試験が近づいてきたときの
実力検証ができなくなってしまうので、
いずれかの年度の問題は
手を付けずとっておき、
試験2週間ほど前に完全初見で
チャレンジするのが良いと思います。
勉強スケジュール例
準備を1か月(不安なら)
統計数理対策を2か月、
統計応用対策を1か月、
過去問演習を2か月、
と考えます。
平日に学校や仕事などがある方でも、
毎週末にしっかり時間をとることで
半年間で300 時間ほどの学習で
十分合格レベルに達すると思います。
統計数理と統計応用はバランス良く勉強
統計検定1級取得には
統計数理と統計応用の両方に
合格する必要があります。
筆者自身もそうでしたが、
統計数理は演習問題が手軽に手に入るので、
どうしても統計数理に偏りがちです。
統計数理の内容が統計応用にも
生かせるのは間違いないのですが、
統計応用は統計数理とは
異なる考え方をする問題や、
知識が求められる問題もあるため、
統計応用向けの対策が効果的です。
統計数理がある程度学べたら、
統計応用の勉強に移行しましょう。
筆者は比率として、
統計数理:統計応用 = 6:4
で勉強していました。
合格のための得点率目標
統計数理は7割(210%)、
統計応用は6割(180%)が目安となります。
この正解率を達成するためには、
統計数理では、
A. 1問100% + 2問55% = 210%
B. 3問70% = 210%
統計応用では、
A. 1問100% + 2問40% = 180%
B. 3問60% = 180%
となります。
Aプランの1問全問正解は
各設問の後半ほど難しいので、
Bプランの部分点を重ねる方針がおすすめです。
どんな問題を解くことになっても、
最低50%は確保できるようにしたうえで、
部分点を稼いででも、
各設問で7-8割を目指しましょう。
問題を解く際には時間を測る
統計数理、統計応用ともに、
試験時間は90分で3問選択するため、
1問あたりにかけられる時間は
たったの30分です。
トータルで90分時間を測り、
3問セットで取り組む演習を
行うとよいと思います。
週末の休日に、
午前に統計数理3問、
午後に統計応用3問
をそれぞれ90分ずつ測って解く、
という演習を繰り返せると、
試験のシミュレーションになり、
おすすめです。
おすすめの勉強法
難易度に応じて正解率を見積もる
統計検定1級の合否は、
ほかの受験者との相対評価で決まり、
上位20%に入ると合格します。
受験生は同じ様な問題演習を
積んできているので、
「他の人もとれる問題」
を落とさず、
「他の人には難しそうでも、
自分なら解けそうな問題」
を増やすことが大事になってきます。
そこで、
問題の難易度を見積もり、
自分が解けるかどうかを
実演してみると良いと思います。
筆者の主観ではありますが、
問題の難易度を作成したので、
ご参考にして頂ければと思います。
- A. 易 (8-10割とりたい)
- B. 普通 (5-8割とりたい)
- C. 難 (2割しかとれず、避けたい)
統計数理 難易度リスト
統計数理 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|
2014 | B | C | B | C | B |
2015 | B | A | B | C | C |
2016 | A | A | A | B | B |
2017 | B | A | A | A | B |
2018 | A | B | A | B | A |
2019 | A | A | B | B | B |
2021 | A | A | B | A | C |
2022 | B | B | B | A | B |
2023 | A | B | A | C | C |
統計応用(理工学) 難易度リスト
統計応用(理工) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|
2014 | C | B | B | C | C |
2015 | B | B | C | C | B |
2016 | B | B | A | A | A |
2017 | A | B | B | B | A |
2018 | B | C | B | B | B |
2019 | C | C | B | C | B |
2021 | A | B | B | A | A |
2022 | B | B | B | B | B |
2023 | B | B | B | B | B |
分野別に問題を集める
統計検定は試験範囲が膨大なので、
全てをマスターしようとするのは、
時間的におすすめできません。
そこで、
自分が興味があったり、苦手意識のない分野を、
2-3個ほど絞って勉強すると効率的です。
統計学実践ワークブック、統計学テキスト、
統計検定準1級、統計検定1級のテキストから、
目的の分野の問題をかき集めます。
この作業にも時間がかかりますが、
費用対効果は高いと思います。
参考までに筆者は、統計応用(理工学)で、
実験計画、回帰分析、時系列解析
の3つを重点的に勉強しました。
その結果、2023年試験では、
回帰分析の勉強を生かして
合格することができました。
もし、勉強した内容が出なかった場合でも、
他の受験生にもなじみがない可能性も高いため、
割り切ってしまうのが大事だと思います。
以下が、
筆者が勉強していた
実験計画、回帰分析、時系列解析
の3分野の問題収集リストです。
実験計画
No. | 教材 | 問題 | ページ | 内容 |
---|---|---|---|---|
1 | 統計学実践ワークブック | 問20.1 | 176 | フィッシャーの3原則 |
2 | 統計学実践ワークブック | 問20.2 | 176 | 1元配置分散分析 |
3 | 統計学実践ワークブック | 問20.3 | 176 | ブロック因子 |
4 | 統計学実践ワークブック | 問20.4 | 176 | 2元配置分散分析 |
5 | 統計学実践ワークブック | 問20.5 | 176 | 乱塊法 |
6 | 統計学実践ワークブック | 問20.6 | 176 | 実験計画法 |
7 | 統計学実践ワークブック | 問20.7 | 176 | 実験計画、直交表 |
8 | 統計学 | 問9.2 | 258 | 直交表 |
9 | 準1級 2015 | 問11 | 146 | 実験計画 |
10 | 準1級 2016 | 問9 | 174 | 分散分析 |
11 | 準1級 2017 | 問7 | 127 | 乱塊法 |
12 | 準1級 2017 | 記述問3 | 162 | 実験計画法、L8直交表 |
13 | 準1級 2018 | 記述問3 | 250 | 二元配置法 |
14 | 準1級 2019 | 記述問1 | 191 | 一元配置法 |
15 | 1級 2014 | 応用理工2 | 115 | 回帰係数の検定 |
16 | 1級 2015 | 応用人文5 | 30 | 分散分析 |
17 | 1級 2016 | 応用理工1 | 100 | 実験計画法、ブロック計画 |
18 | 1級 2018 | 応用理工4 | 130 | 実験計画法、主効果の検定 |
19 | 1級 2019 | 応用理工3 | 52 | L8直交表 |
20 | 1級 2021 | 応用理工2 | 122 | ブロック因子 |
21 | 1級 2022 | 数理5 | 14 | 分散分析モデル |
22 | 1級 2022 | 応用理工2 | 53 | 一元配置法 |
23 | 1級 2022 | 応用理工3 | 57 | 中心複合計画 |
回帰分析
No. | 教材 | 問題 | ページ | 内容 |
---|---|---|---|---|
1 | 統計学実践ワークブック | 問16.1 | 133 | 重回帰分析 |
2 | 統計学実践ワークブック | 問16.2 | 135 | βの最小二乗推定量、t統計量 |
3 | 統計学実践ワークブック | 問16.3 | 136 | Elastic Net |
4 | 統計学実践ワークブック | 問18.1 | 152 | ロジスティック回帰 |
5 | 統計学実践ワークブック | 問18.2 | 153 | ロジスティック回帰, オッズ比の95%信頼区間 |
6 | 統計学実践ワークブック | 問18.3 | 153 | プロビットモデル |
7 | 統計学実践ワークブック | 問18.4 | 153 | ポアソン回帰 |
8 | 統計学実践ワークブック | 問19.1 | 163 | トービットモデル, AIC |
9 | 統計学 | 問6.1 | 187 | 重回帰モデル |
10 | 統計学 | 問6.3 | 190 | 回帰係数の推定精度、条件付き期待値の95%信頼区間 |
11 | 統計学 | 問9.1 | 257 | 重回帰 |
12 | 準1級 2015 | 問9 | 143 | 回帰モデルの条件付き期待値 |
13 | 準1級 2015 | 問15 | 152 | 回帰モデルの比較 |
14 | 準1級 2015 | 記述問2 | 175 | 重回帰、対数変換 |
15 | 準1級 2015 | 記述問3 | 178 | 分割表、ロジスティック回帰 |
16 | 準1級 2016 | 問13 | 180 | 回帰分析 |
17 | 準1級 2016 | 記述問2 | 209 | 最小二乗推定、AIC |
18 | 準1級 2017 | 問3 | 122 | L1,L2正則化ロジスティック回帰 |
19 | 準1級 2017 | 問14 | 136 | 線形回帰モデル、回帰診断 |
20 | 準1級 2018 | 問10 | 220 | L1,L2正則化 |
21 | 準1級 2018 | 記述問2 | 246 | プロビットモデル |
22 | 準1級 2019 | 問8 | 167 | Fused Lasso |
23 | 準1級 2019 | 問10 | 172 | ロジスティック回帰モデル |
24 | 1級 2014 | 数理3 | 77 | 回帰係数の検定 |
25 | 1級 2014 | 応用人文2 | 89 | 回帰分析 |
26 | 1級 2015 | 数理3 | 7 | 重回帰 |
27 | 1級 2015 | 応用医薬3 | 62 | 回帰、行列 |
28 | 1級 2015 | 応用医薬4 | 68 | ロジスティック回帰 |
29 | 1級 2016 | 数理3 | 66 | 線型モデル |
30 | 1級 2016 | 応用社会1 | 86 | 対数変換、回帰、信頼区間 |
31 | 1級 2016 | 応用社会3 | 94 | 固定効果モデル、一般化最小二乗推定量(GLS) |
32 | 1級 2017 | 応用社会1 | 28 | 単回帰モデル、回帰係数の信頼区間 |
33 | 1級 2021 | 応用社会4 | 115 | 重回帰、分散分析 |
34 | 1級 2021 | 応用理工1 | 120 | ロジスティック回帰 |
35 | 1級 2021 | 応用医薬4 | 146 | 変量効果モデル |
36 | 1級 2022 | 応用社会3 | 42 | 単回帰モデル |
時系列解析
No. | 教材 | 問題 | ページ | 内容 |
---|---|---|---|---|
1 | 統計学実践ワークブック | 問27.2 | 252 | MA(2)過程の共分散 |
2 | 準1級 2015 | 問10 | 144 | DW比 |
3 | 準1級 2016 | 問6 | 170 | 回帰モデル, DW統計量、自己相関係数 |
4 | 準1級 2017 | 問8 | 128 | 残差系列, DW比 |
5 | 準1級 2018 | 問8 | 216 | AR(1)モデル |
6 | 準1級 2019 | 問12 | 175 | AR(p)モデルの定常性、MA(q)モデル |
7 | 1級 2014 | 応用理工4 | 120 | 確率過程、移動平均モデル |
8 | 1級 2015 | 応用社会3 | 40 | 時系列モデル, ユールウォーカー法 |
9 | 1級 2016 | 応用理工2 | 102 | AR(2)過程 |
10 | 1級 2017 | 応用社会2 | 30 | 時系列、検定 |
11 | 1級 2018 | 応用社会3 | 116 | 時系列モデル, ARCH型モデル |
12 | 1級 2019 | 応用理工4 | 35 | AR(1)モデル |
13 | 1級 2022 | 応用社会4 | 46 | 時系列モデル |
ChatGPTに聞く
統計検定を勉強していると、
書籍を眺めているだけでは、
理解が浅くなる箇所があります。
そこで、
近年急速に発達している、
ChatGPTのような生成AIの力を
借りて勉強するのがおすすめです。
GPT-4( 20 $/月 )なら、
データをエクセルファイルなどで渡して、
ロジスティック回帰の分析などもしてくれます。
気軽に質問できる専門家という感覚で、
疑問点が湧いたらすぐに聞くようにしましょう。
参考になれば嬉しいです
今回は統計検定1級の勉強法を紹介しました。
筆者は2022年に不合格でしたが、
2023年に6か月間、毎週末に勉強することで、
2023年試験に合格することができました。
統計数理研究所によると
統計検定1級は、
「データ分析を業務で
活用するための棟梁レベル」
として設定されています。
「棟梁」という言葉を調べると、
「組織や仕事を束ねる長や中心的人物」
となっています。
筆者も統計検定1級に合格したことで、
「組織の中でデータ分析の棟梁として、
中核となって業務を遂行する」
という自信とやる気に満ちています。
統計検定1級を通して学んだ考え方を、
本業のデータ分析のみならず、
このブログ執筆においても生かし、
筆者ならではのオリジナリティを
この世界に発信していきたいと思います!